トピックス

2023年1月30日

株式会社XNef

うつ病診断脳回路マーカープログラムの有用性を検討する臨床試験のプロトコル論文を発表いたしました。

背景

 精神疾患の治療法開発は長年停滞しており、その一因として、客観的な診断方法が存在しないことが挙げられます。 代表的な精神疾患としてしられるうつ病は、抑うつ気分・意欲の低下などを特徴とする疾患で、すべての病気の中で最も大きな社会的損失をもたらすと言われています。 現在の診断は問診に基づく医師の主観的判断に依存しており、最新の診断基準を用いてもうつ病診断の信頼性は十分でないとされています。 こういった状況の中で、客観的な診断方法の確立は喫緊の課題と考えられてきました。

具体的な内容

 株式会社XNef・国際電気通信基礎技術研究所(ATR)・広島大学病院は、機能的MRI (fMRI)を用いたうつ病診断脳回路マーカープログラムの有用性を検討する臨床試験を開始したことをご報告しました(https://www.xnef.jp/topics/topics_20221014.html)。 今回我々は、この臨床試験のプロトコルを、論文として国際誌BMC Psychiatryに発表いたしました。
 XNefが中心となり、2022年度中にうつ病診断支援脳回路マーカー(Yamashita A et al., PLoS Biology., 2020)のプログラム医療機器としての承認申請を行う予定で、実用化の最終段階に入っています。 うつ病診断支援脳回路マーカーが実用化されることで、10分間のMRI撮像でうつ病の客観的診断が可能となり、これまでの主観的判断に基づく精神科診断を大きく変えることができると考えています。 しかし、これまでにない画期的なプログラム医療機器であることから、さらなる検証とエビデンスの蓄積が必要です。 信頼できる検証のためには、臨床試験の背景・理論的根拠・目的・デザイン・方法・解析方法および実施機関を事前に明らかにしておくことが必須で、これらの詳細な内容を公開するために今回のプロトコル論文を発表いたしました。

論文情報

論文著者名とタイトル
Go Okada*, Yuki Sakai*, Maki Shibakawa, Toshinori Yoshioka, Eri Itai, Hotaka Shinzato, Osamu Yamamoto, Kenichi Kurata, Tatsuji Tamura, Hiroaki Jitsuiki, Hidehisa Yamashita, Akio Mantani, Norio Yokota, Mitsuo Kawato, and Yasumasa Okamoto
“Examining the usefulness of the brain network marker program using fMRI for the diagnosis and stratification of major depressive disorder: a non-randomized study protocol”
BMC Psychiatry, vol. 23, no. 1, pp. 63, 2023.
DOI: 10.1186/s12888-023-04560-y
* 筆頭著者
責任著者

研究支援

本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)・医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)ViCLE実用化開発タイプの『人工知能技術と脳科学の精神疾患診断治療への応用』課題JP20pc0101061(代表 株式会社XNef)の支援を受けて実施しました。